創作漢字コンテスト

第4回 創作漢字コンテスト

受賞作品一覧

最優秀賞

タイ
おびじめ
結んだ帯が解けないように、帯の上に締める紐
大田区下丸子
井手晃一さん(83)

富国生命優秀賞(A部門)

  • チ(値)ジョウ(上)
    ねあげ・あたいたかし
    物価があがる
    兵庫県加古川市
    松﨑毅さん(70)
  • でたらめ・たわごと・あだごと
    いまは土の中で種でも、出たら芽となる
    栃木県那須塩原市
    森雅樹さん(39)
  • モウ(網)コ(戸)
    あみど
    網戸
    大阪府河内長野市
    橋本弘嗣さん(26)
    神戸市西区
    木村武雄さん(60)
  • ツベコベ
    うるさし・かまびすし
    四の五の言う
    神奈川県平塚市 野村昌弘さん(74)
  • キョロ・チラ
    ちらみ・よそみ
    ちらちら見る。キョロキョロよそ見する
    札幌市東区
    橋本勇希さん(28)
    大坂府大阪市北区
    西川早苗さん(41)
  • キョロ・チラ
    ちらみ・よそみ
    ちらちら見る。キョロキョロよそ見する
    札幌市東区
    橋本勇希さん(28)
    大坂府大阪市北区
    西川早苗さん(41)

Z会優秀賞(B部門)

  • アイプチ
    ふたえ(二重)
    訓読みの通り。少し整形したか
    徳島県名西群石井町
    笠井桃子さん(18)
  • ヨ(予)テイ(定)
    よてい
    予定
    千葉市緑区
    木村明日香さん(14)
  • コウ
    いるみねーしょん
    (イルミネーション)
    木のまわりを電球の光で飾っている
    神奈川県横須賀市
    宇佐美章慶さん(11)
  • やきいも
    芋を焼く
    宇都宮市上篭谷町
    上野想さん(17)
  • クウ
    おぞんほーる(オゾンホール)
    オゾン層がフロンガスによって壊され、空に穴が開いている
    北海道利尻群利尻町
    小倉麗央さん(9)

「成語・慣用句」部門

  • ケン(犬)コン(丨)
    さいわい
    犬も歩けば棒に当たる
    東京都文京区
    田口友美さん(31)
  • ゲン
    いいなす
    線を一本多くして「一言多い」
    大阪市住之江区
    塩見眞美さん(60)
  • シン(信)ガ(訝)
    なかばあやし
    半信半疑。「信」と「訝」との組み合わせ
    群馬県伊勢崎市
    関根範行さん(64)
  • ヘイ(閉)
    とざす・ける
    門前払い
    埼玉県ふじみ野市
    宮田達さん(45)
  • タン(丼)サン(算)
    どんぶりかんじょう
    大雑把な会計
    大阪府泉南市
    万代親典さん(58)

審査委員長特別賞

  • セン
    たかおおぎ(高扇)
    上から目線
    群馬県高崎市
    鈴木泰子さん(56)
  • ベイ(皿)
    こころいれ(心入)
    目を皿のようにする
    大阪府堺市
    山野大輔さん(38)
  • モク
    こびる・へつらう
    上目(うわめ)づかい。人に媚を売るさま
    奈良市
    山本恵さん(50)
  • ケン
    つちかう
    長い目で見る
    大阪府豊中市
    村瀬直子さん(28)

佳作

  • シタジキ
    したじき
    下敷き
    広島市安佐南区
    落合陶子さん(15)
  • ギャクタマ
    ぎゃくたま
    「玉の輿」の逆
    宮崎県宮崎市
    本間和恵さん(36)
  • スッポンポン
    むきだし
    身もふたもない
    兵庫県芦屋市
    曽我敬子さん(52)
  • モン
    とざす
    閉門
    横浜市都筑区
    加藤まゆみさん(68)
  • チョイワル
    ちょいわる
    もうちょっとで本当の「ワル」
    東京都世田谷区
    下鶴俊輔さん(30)
  • ドジ
    まぬけ・うつけ
    日が抜け落ちてマヌケ・とんまに
    愛知県豊川市
    内山英之さん(34)
  • コウ
    すべる
    口が滑る。うっかりいってしまう
    広島県呉市
    今廣真希さん(15)
  • ジョウズ(上手)ヘタ(下手)
    まじる
    玉石混交。巧拙
    東京都三鷹市
    望月治さん(63)
  • カツ(割)
    さく・わる
    地割れ。断層
    大坂府吹田市
    加藤雅一さん(54)
  • あくどし
    生き馬の目を抜く
    静岡県駿東郡小山町
    池谷淳さん(81)

コンテストの総評

作品が洗練され激戦になった

激戦だった。今年の流行語大賞「(倍返し)」は、同一形が50通近くあり、多すぎたため、入賞を見送らざるを得なかった。同じく「じぇじぇじぇ」も「」(「是」が「じぇ」となったとする説あり)などいくつかあったが、決め手がなかった。
選外だが、「(おてん)、(マッチ)、(あかてん)」のように一点を加えたもの、「(はなれわざ)、(にくばなれ)、(くちをわる)、(はらをわる)」のような文字の中に空間を入れたもの、「(うらさく=裏作)、(てのひらをかえす)、(はんめんきょうし=反面教師)、(だっきゅう=脱臼)、(だんさ)」など原形を可能な限り残して意味を出そうとする工夫が見えた。
惜しかった作品に「(ノンアルコール)・(運命=赤い糸)」があった。残念ながらすでに存在していたので省かれたが、この意味を付け加えて使ってもいいのではないかと思う。
最優秀作品の「(おびじめ)」は、形の美しさと楷書の最終画の一筆を「〆」という行・草書風で締め終わるのは、意外性が高くて見事である。
創作時、周辺の物や自分に親しみのある物を材料としやすい。その例として「目」がある。非常に多くの優れた作品があり、今回、入賞作品以外に4点を審査委員長特別賞として選んだ。
審査会は明るく、楽しい笑いが絶えなかった。また、第1回に比べて作品が洗練されてきていることを強く感じた。水準の向上であり、激戦の大因であろう。それは、ひょっとしたら漢字創作の歴史の縮図であるのかもしれない。

審査委員長 加地 伸行
(立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所 前所長)

昭和11年(1936)大阪生まれ。大阪大学名誉教授。立命館大学研究顧問。文学博士。 中国哲学専攻。著書『儒教とは何か』(中公新書)、『沈黙の宗教-儒教』(ちくま 学芸文庫)、『論語全訳注』(講談社学術文庫)など